今回は花粉と統計学のつながりについてご紹介いきたいと思います!
この記事を読むと分かること
花粉の飛散量の予測方法の概要
※細かい計算方法については言及しておりません。
是非最後まで楽しんでください!
花粉の飛散量
12月頃になると、来シーズンの花粉情報が各メディアより発信され始めます。
花粉症の方にとってはかかせない情報で、人によっては花粉に対する備えが必要になることと思います。
花粉情報には、いつから花粉の飛散が始まるのか、飛散量は前シーズンや例年と比較して多いのか、少ないのかなどの情報が含まれています。
その情報の中で、花粉の飛散量がどのように計算、予測されているのかをご存じでしょうか。
スギなどの木の本数を数えているのでしょうか。
もしくは空気中の飛散量を計算しているのでしょうか。
実は、花粉の飛散量は夏の気象条件や雄花(おばな=おしべがあり、めしべがない花)数の調査結果を基に飛散量は計算されており、統計的に予測されているものなのです。
ここからは実際に環境省で行われている花粉に関する調査を参考に、飛散量がどのように計算、予測されているのかの概要を解説します。
飛散量の計算(予測)
飛散量の計算(予測)として、以下の2つが行われています。
- 気象データによる計算
- 雄花数による計算
※この記事では、例としてスギ花粉の飛散量を対象とします。
①気象データによる計算
まず、スギ花粉の形成から飛散までの過程を簡単に説明します。
- 夏頃より雄花が成長し、花粉が形成される
- 冬の間、休眠する
- 2月頃より開花し、花粉の飛散が始まる
この過程から分かる通り、花粉の飛散量に影響を与えるのは、夏からの雄花の成長具合です。
夏に雄花が大きく成長するほど、形成される花粉の全体量も増え、飛散量も多くなります。
逆に成長が小さい場合は、飛散量も少なくなります。
これは雄花の成長と飛散量が比例関係にあるということです。
ただ、夏に雄花がどのくらい成長したのか、無数にあるスギの木を一本一本確認することは、とても現実的ではありません。
そこで、雄花の成長(=飛散量)予測に使用されているのが、夏の気象データです。
雄花の成長は、夏の気象条件に大きく影響を受け、高い相関があるといわれています。
夏の気象条件としては、以下が挙げられます。
- 気温
- 湿度
- 日照時間 など
気温が高く、湿度が低く、日照時間が長いほど、雄花の成長を促し、花粉の飛散量も増えます。
具体的な計算方法としては、以下の手順で行われています。
1)日本全体の天候を分析(気温や降水量、日照時間など)
→気象データより、雄花が成長しやすい環境であったかを確認
2)各都道府県(複数の市町村)の日照時間(夏)と花粉の飛散量(実測値)を相関分析
→各都道府県の中で最も相関が高い市町村を設定
3)相関が高い市町村の日照時間と花粉の飛散量を基に、重回帰分析により来シーズンの飛散量を計算
※重回帰分析とは…原因とみられる複数の要素が結果にどの程度影響を与えているのかを数 値化し、複数の要素から結果を予測できるようにする分析手法のこと。
参考)重回帰分析とは 活用場面や単回帰分析との違いとともに解説
気象データによる飛散量の計算では、雄花の成長具合と相関が高い気象条件に着目して、日照時間と飛散量の相関分析、重回帰分析により来シーズンの飛散量を計算しています。
②雄花数による計算
①では、夏の気象条件(気温、日照時間等)より、雄花が成長しやすい環境であったかを判定し、相関分析、重回帰分析により、花粉の飛散量が計算されていました。
ただ、実際に雄花が想定通り成長したかどうかはわからず、気象データによる計算のみでは、誤差が生じる可能性があります。
そこで、①の気象データによる計算に加えて、秋にスギ林を訪れ、雄花数(成長具合)の調査が以下の手順で行われています。
1)固定した視点からスギ林を観察し、無作為に40本の木を選ぶ
2)双眼鏡により目視観察し、対象のスギの雄花が黄色になったものを確認する
3)木1本毎に雄花の成長具合をランク付け、点数をつけ合計する
(雄花が成長している=点数が高い)
4)実際に落下した雄花数と合計点数より、雄花数を推定する
(点数が高い=推定雄花数が多い)
上記の調査により得られた推定雄花数と、花粉の飛散量の相関分析(各都道府県の相関と近隣エリア同士の相関分析)を行い、最も相関が高い組み合わせを選択します。
その相関分析の結果を基にした回帰分析により、来シーズンの飛散量を計算しています。
※回帰分析とは…結果に影響を与える要因となる変数が1つであり、その1つの変数から結果を予測する分析手法
参考)単回帰分析とは Excelでの求め方や活用事例とともに解説
まとめ
本記事では、花粉の飛散量がどのように計算されているのか、環境省で実際に行われている花粉に関する調査を参考に解説しました。
飛散量の計算(予測)は、気象データと雄花数の調査を基に相関分析や回帰分析により行われていました。
今回紹介した飛散量の計算のように、過去のデータや現状を知ることで、未来を予測することができ、そこには統計学が密接に関係しています。
(参考文献)