今回は、世界的に有名な確率論の難問「モンティホール問題」についてご紹介します。
一見何でもなさそうな問題ですが、実に1000人以上の数学者が引っかかってしまった確率の奇問です。
皆さんも一緒に考えながら読んでください!
この記事を読むと分かること
- モンティホール問題とは
是非最後まで楽しんで読んでいただければ幸いです!
モンティホール問題とは
今回のメインテーマとなる数学界の奇問は、「モンティホール問題」と呼ばれる問題です。
この名称は、アメリカのゲームショー番組「Let's make a deal」の司会者の名前にちなんでつけられたものです。
今から30年ほど前の話。
アメリカの日曜ニュース雑誌『Parade』のなかで、「マリリンにおまかせ」というコラムがありました。
これは、世界最高のIQの持ち主としてギネス記録にも認定されて名高いマリリン・ボス・サヴァントが連載していたコラムです。
※ちなみに、マリリンのIQはなんと「228」!凄すぎてピンときません。笑
騒動の発端は、1990年9月9日号の『Parade』に掲載された「マリリンにおまかせ」のコラムです。
「Let's make a deal」で行われていたゲームについての質問が読者から寄せられ、それに対するマリリンの回答が物議を醸したのです。
その問題は、以下のようなものです。
プレイヤーには3つのドアの選択権が与えられる。1つのドアの後ろには高級車が、残りの2つの後ろにはヤギがいます。プレイヤーが1つのドアを選択し、ドアの後ろに何があるのかを知っている司会者が、選択されなかった2つのドアの中からヤギのいるドアを開いて見せます。そして、出場者にこう尋ねます、「開けてないもう1つのドアに変えますか?」と。このときプレイヤーは選択を変更すべきかどうか。
高級車=当たり、ヤギ=はずれで考えてくださいね。
皆さんも是非、「選択を変えるべきか」「選択を変えないべきか」「選択を変えても変えなくてもどちらでもよい」のか、考えてみてください!
モンティホール問題に対するマリリンの回答
さて、皆さんのなかで答えは決まりましたか。
それでは、この問題に対するマリリンの回答をみていきましょう。
《マリリンの回答》
「正解は『ドアを変更する』である。なぜなら、ドアを変更した場合には景品を当てる確率が2倍になるからだ」
この回答が載った『Parade』が発行されるやいなや、このマリリンの回答に対して、読者から「彼女の解答は間違っている」といった内容の投書が殺到。
その数はなんと一万通以上と言われています。
1つの雑誌のコラムが、全米に波及するほどの大議論となったのです。
大多数の反対側の意見は、「選択を変えても変えなくても確率は変わらない」というものでした。
1万通以上送られてきた抗議の投書のなかには、1000人近くの数学者や博士からの批判も含まれていました。
その内容は、「あなたの間違いはアメリカ人の恥ずべき無知の象徴だ」「自分から数学的無知をこれ以上世間に広める愚行を直ちに止めなさい」など散々なものでした。
その中には、世界的に有名な20世紀を代表する数学者ポール・エルディシュもいたといいます。
モンティホール問題の正解
史上最高のIQの持ち主マリリンと天才数学者を含む大多数の意見、正しいのは一体どちらなのでしょうか。
この問題の正解は、「確率が当初の1/3から2/3に上がるため、選択を変更した方がよい」です。
要するに、マリリンが正しかったいうわけです。
一見、選択を変えようが、変えなかろうが、確率は変わらなそうなこの問題に、数多くの専門家が引っかかってしまったのです。
それにしても何故、選択を変えるだけで確率が1/3から2/3へ上がるのでしょうか。
その答えは、統計学におけるベイズ推定という考え方を使うことで導き出せます。
ベイズ推定とモンティホール問題
なぜマリリンの回答が何故正しいと言えるのか。
それは「ベイズ推定」における条件付き確率の概念に帰着します。
順を追って考えていきましょう。
まず、プレイヤーが最初に選んだドアの後ろに高級車がある確率は1/3です。(事前確率)
そして、ゲームの答えを知っている司会者が、ヤギのいるドアを1つ選び、プレイヤーに選ばれなかった残りの2つのドアをまとめて1つのグループとして捉えると、そのグループの中に高級車がある確率は2/3です。
その確率2/3のグループの中から、高級車がないドアを取り除いた行為です。(事後確率)
従って、その確率2/3のグループから、確率0のドアの存在が司会者によって除外されただけであり、そのグループの中に高級車がある確率は2/3のまま変わりません。
それ故、最初の選択から変更することで、確率1/3から、確率2/3へと変わることになる。
選択を変更すべき、という訳です。
このモンティー・ホール問題は、直感では分かりにくい条件付き確率の例としてよく用いられます。
数学者ジョン・パウロスの説明
先ほどの説明ではイマイチよく分からなかった・・・という方は、ジョン・パウロスの説明の方が分かりやすいかもしれません。
それは、問題では3個だったドアを、100個と仮定して考えてみるというものです。(高級車は1つのドアの後ろのまま)
そうすると、1つのドアを選択したに、司会者が98個のハズレのドアを順々に開いていくわけです。
そして、最後に99個目のドアのときに選択を変更するかどうかをチャレンジャーに聞きます。
こうして考えると、最初に選んだ確率1/100のドアよりも、99/100だったドアのグループとの比較となるので、選択を変える方が明らかに得策だということが分かると思います。
まとめ
余談になりますが、マリリンの回答に抗議した天才数学者エルディシュは、モンティー・ホール問題について、同僚とコンピュータシミュレーションや、全米各地の学校で実地検証をしました。
その結果、マリリンの解答が正しいということが判明し、素直に誤りを認めたそうです。
また、有名なサイエンス・ライターであるマーティン・ガードナー(1914~2010)は、「専門家がいとも簡単にヘマをやらかす数学の分野は、確率論においてほかにはない」というコメントを残しています。
確率論の難しさをシンプルかつ的確に表現した秀逸なコメントです。
モンティー・ホール問題、それは「天才マリリンは、やっぱり天才だった!」ということを世界中に知らしめた数学界の大騒動のお話でした。
モンティホール問題について、面白くまとめておられるYoutube動画もありましたので、ご紹介します!
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