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保険業界におけるデータ活用方法 概要や事例を分かりやすく解説

こんにちは!統計ブロガーのにっしーです!

今回は保険代理店業界におけるデータ活用方法についてご紹介します。

本記事では、保険代理店がデータ活用をする目的、保険代理店業界におけるデータ活用の特徴、保険代理店業界を取り巻くデータ活用の現状と展望について分かりやすく解説します。

この記事を読むと分かること

  • 保険代理店がデータ活用をする目的
  • 保険代理店の主なデータ活用手法
  • 保険代理店業界におけるデータ活用の特徴
  • 保険代理店業界におけるデータ活用の事例
  • 保険代理店業界を取り巻くデータ活用の現状
是非最後まで楽しんで読んでいただければ幸いです!

保険代理店がデータ活用をする目的

保険代理店は主に見込顧客の集客や保険商品のニーズ喚起といった営業活動を積極的に推進する目的でデータを活用しています。

また、見込客のみでなく既存客データを活用することで、既存客への定期的なフォローを行っていくことにより新しいマーケティングにつなげることもできます。

例えば、月に一度、誕生月の顧客を抽出して「ねんきん定期便」の見方を伝えたり、保険料金額が上位の顧客をリスト化して資産運用関連の話を持ちかけたりすることで、既存客に対しても引き続きアプローチすることができるのです。

ほかの業界とは異なり、保険代理店が扱う保険商品は特性上契約期間の長い商品が多くあります。

50年先まで顧客とお付き合いするためには顧客1人ひとりに対して会社全体で組織的なお付き合いをしていくことが大切になってきます。

保険代理店の主なデータ活用手法

  • ①VoC分析
  • ②3C分析
  • ③360度ビュー(Customer 360)

では、詳しく見ていきましょう!

①VoC分析

VoC分析とは、顧客の声分析とも呼ばれるもので、顧客の意見や声を収集・分析して企業活動に活かす分析方法です。

お問い合わせセンターやSNS等に寄せられた顧客の声を収集・分析することで、商品の品質改善や競合他社との差別化を図ることができます。保険代理店でも、顧客が求めている保険商品や他社では未実現のサービスのヒントを得ることで、顧客ニーズに応えた保険サービスの提供につなげることができます。

②3C分析

3C分析とは、Customer(市場・顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の3つのCについて分析する方法です。3つのCそれぞれの分析から商品やサービスの成功要因を発見することで、進むべき方向性が見えるようになります。

保険代理店業界では、特にCustomer(市場・顧客)について分析することで、販売営業力や固定客化力を強化できます。販売営業力では、顧客ニーズのヒアリングからニーズ喚起や提案、固定客化力では、その保険代理店でしか受けることのできない会員サービスを充実させることで差別化の難しい保険商品以外の要素で他社に差をつけることができます。

③360度ビュー(Customer 360)

360度ビュー(Customer 360)とは、社内外のデータを活用し顧客の動きを詳細に分析する方法のことです。特に大手の保険代理店では大量の顧客データを保有していることもあり、これらのデータを活用することで顧客ニーズについて多くの成果が期待できます。顧客が求める保険商品の正確な把握や保険代理店として顧客側に提供すべきサービス、他社との差別化等を顧客行動に基づいて分析するこの方法は、今後さらに活発化していくと予想されています。

保険代理店業界におけるデータ活用の特徴

①募集・顧客フォロー

保険代理店では募集や顧客フォローのためにデータが活用される傾向にあります。保険商品のマーケティングや、契約期間の長い保険商品では顧客が求める保険サービスのニーズを常にキャッチすることで、新規客の開拓や固定客の確保を目指しています。

②リスクの的確な把握

保険代理店は保険契約者にとって常に変化するリスクを適確に把握することで、保険商品の提案を通じてベストな補償を提供するためにデータを活用しています。サービス型保険事業者として、高度なリスク分析や評価を実現することで顧客に対して適切なサービスを提供することができます。

③ライフステージに応じた保険商品の提供

結婚、出産、定年等のそれぞれの顧客のライフステージを予測し、将来想定されるリスクを分析しています。先を見越したリアルタイムなリスク管理に基づく保険サービスを提案することで、顧客に対して価値の高いサービスを提供しています。

保険代理店業界におけるデータ活用の事例

①ダイレクトメールの成約率予測 

ある保険代理店では、一定の時期に顧客リストに保険勧誘のダイレクトメールを送付していましたが、送付数の割に成約率が大きくなく、全員に送付するとコストが超過してしまう問題がありました。そこで顧客データを活用し、一定の成約確率以上の顧客にだけダイレクトメールを送付することで、送付数を絞りつつ成約率向上を達成することができました。

②自動応答チャットボットの実装

ある損害保険代理店では損害保険会社と協力し、24時間いつでも顧客の問合せに回答する提案型の自動応答チャットボットを実装しました。

損害保険代理店が蓄積した問合せ内容に関する分析データと損害保険募集人の有資格者による回答事例をもとに、顧客の疑問や悩みに沿ったご提案を表示する設計になっています。

また、チャットボットへのアクセスデータを分析することで、リリース後も問題解決の精度向上を図っています。

③顧客一人ひとりの火災保険料を最適化

火災保険を提供するアメリカの保険代理店ではアプリを使用し、入力された住所から建物の情報の検索や、その建物の築年数・建物の耐久性・海岸からの距離・消防署からの距離等を計測し、保険料を最適化しています。

これらのデータを活用することで、個々人のリスクに最適化した保険を提供することが可能です。また、データを活用することの利点として、多くのデータが集まるほど保険料算出の精度向上にもつながる点が挙げられます。

保険代理店業界を取り巻くデータ活用の現状

2016年の保険業法の改正により、保険代理店は顧客の意向把握やデータの記録が義務化されました。また、顧客本位の業務運営における方針を公表し、定期的な取組状況の公表も義務化されています。その結果、保険代理店業界ではシステムを活用した業務の効率化が喫緊の課題になっています。

こうした法改正もあり、今まさに保険代理店業界では変革期を迎えていると言われています。法改正のほかにも、少子高齢化に伴う人口減少により顧客獲得のための競争が激化し、顧客ニーズも多様化していることが挙げられます。そのため、保険代理店ではデータ利活用によってこれらの環境変化に対応しようとしているのです。

例えば、生命保険商品では健康支援サービスに注力することで、健康に長生きしその中で生じる様々なリスクに備えサポートしてくれる存在へと変貌してきました。また、損害保険商品では、テクノロジーを駆使することで安全安心なサポート機能を充実させた保険サービスを提供することで、損害保険商品の持つ役割を拡大しようとしています。

保険代理店業界のデータ活用の展望

今後のデータ活用では、保険代理店のデータとして活用するだけではなく、健康・医療・介護分野における幅広いデータの集積が起こる可能性があります。

例えば、生命保険商品でデータ活用が進展した場合、保険契約引受の際に得られる健康・医療データや健康増進サービス利用先から得られる集積したデータを活用することで(例えば、保険者の同意を得られたうえで医療機関や企業等にデータを提供する等)、保険データを利用者利便の更なる向上のため利活用することができます。

まとめ

本記事では、保険代理店がデータ活用をする目的、保険代理店業界におけるデータ活用の特徴、保険代理店業界を取り巻くデータ活用の現状と展望について解説しました。データ活用において変革期を迎えている保険代理店業界では、旧来的な「万が一への補償」の役割から、「健康で長生きする中で生じる様々なリスクに対処してくれる存在」へと変貌を遂げています。データ活用によって変わりつつある保険代理店業界の動向には、より一層注目していきたいですね。

※参考サイト

「保険代理店向けデジタルマーケティングプラットフォームの提供を開始」(東京海上日動火災保険株式会社)
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/220113_01.pdf
「保険代理店の差別化 システムのメリットとは?」(CSBsystem)
https://hoken-system.com/column/%E4%BF%9D%E9%99%BA%E4%BB%A3%E7%90%86%E5%BA%97%E3%81%AE%E5%B7%AE%E5%88%A5%E5%8C%96%E3%80%80%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F/
「AI現場レポート:某保険代理店におけるVoC分析のお話(分析AI YOSHINA事例)」(株式会社レトリバ)
https://blog.retrieva.jp/entry/2020/09/14/110959
「VOC分析とは?期待できる効果やメリット、活用する手法などを解説」(BIZ GARAGE)
https://www.bizgarage.jp/column/seo_id17
「vol.16 保険代理店業界における差別化 保険FPコンサルティングレポート vol.16」(保険代理店 経営者.com)
https://hokenfp-keiei.com/post-1268/
「3C分析とは?マーケティングでの目的と、顧客・自社・競合の分析方法」(List Finder)
https://promote.list-finder.jp/article/marke_all/3c-analysis/
「顧客行動の分析に欠かせない“360度ビュー”、保険業界ではどう取り組むべき?」(ホワイトペーパーダウンロードセンター)
https://wp.techtarget.itmedia.co.jp/contents/44711
「Customer 360とは?」(integrate.io)
https://www.integrate.io/jp/blog/what-does-customer-360-mean-ja/
「保険業界で進む3つのパラダイムシフト、問われる「データ利活用」の実力」(日本アイ・ビー・エム株式会社)
https://www.ibm.com/downloads/cas/MPVP7RLN
「DM送付時の成約確率予測」(TDSE株式会社)
https://www.tdse.jp/case-study/efficient-dm-delivery/
「保険業界で活用進むAI・人工知能。最新の導入事例を紹介」(Alsmiley)
https://aismiley.co.jp/ai_news/insure-tech-ai/
「データで保険が最適化される時代?データを活用した保険代理店経営とは」(hoken magazine)
https://media.hkn.jp/97
「hokan 保険代理店向けのデジタル活用や業法対応のための社内業務整備に役立つ資料を無料公開」(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000065.000028337.html
「保険業界のDX推進・AI活用事例」(TDSE株式会社)
https://www.tdse.jp/service/insurance/
「生命保険業界における情報の利活用」(第一生命保険株式会社)
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/seido-sg/siryou/20181206/daiichi.pdf

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  • この記事を書いた人

にっしー

フリーランス3年目の29歳。 専門統計調査士など、統計に関する資格を複数保有。 自分が数学苦手だった文系だからこそ書ける、分かりやすい情報発信を心がけています。 著書『これから学ぶ人のための統計学超入門』 寄稿実績『知識ほぼゼロからデータ分析の専門家になる(週刊東洋経済)』、『50歳からの学び直し入門 (インターナショナル新書)』(一部)

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