今回は、Excelを使ったデータ分析で業績を大きく上げたワークマン社のExcel経営についてご紹介します。
この記事を読むと分かること
ワークマン社のExcel経営について
是非最後まで楽しんで読んでいただければ幸いです!
Excel経営とは
Excel経営は、Excel教育を社員全員に施すことにより、会社全体のデータ経営力の向上を目指した経営方法です。
ワークマンが行うExcel経営は、ワークマンがもともと持っていた商品価値を、より効果的に扱うことに成功しています。
Excel経営を導入する前のワークマンは、データ経営とは無縁の会社でした。
在庫の数量データを管理しておらず、約700あった全ての店舗をSV(スーパーバイザー)が回り、商品を直接数えて管理をしていた状態です。
ですが「作業服」に特化していたので競合が少なく、優秀な社員を各店舗に何度も派遣するという、とにかく人を動かすような方法でも経営していけました。
しかし「作業服」を購入してくれる顧客数は限られているため、いつかは市場が飽和し、売上が頭打ちになってしまいます。
ワークマンの未来のためには、新しい顧客を確保しないといけません。
遅かれ早かれ、新たな市場を開拓するために、データ経営を導入せざるを得なくなりました。
新商品を開発したところで、アパレルショップはレッドオーシャン(競合が多い)市場のため、まともに戦えません。
そこでワークマンは、自社が得意とする「低価格×機能性」の衣服をそのまま扱えそうな、ブルーオーシャン(競合が少ない)市場に目を付けました。
ブルーオーシャン市場は、競合と顧客の取り合いになってしまう心配は少ないものの、代わりに経営のお手本となる企業がいません。
参考になるデータが無いため、どのように経営戦略を練っていけば良いか分からない中、ワークマンは「社員全員にExcel教育を施し、会社全体のデータ経営スキルを向上させる」ことを選びました。
現場に関わる社員が知識を持てば、それぞれの店舗で培った経験を、データから読み解き利用することができます。
社員総出で、何年もかけてデータを集めるよう努めました。
蓄積されたデータを活用し、業態を変えブルーオーシャン市場に新店舗を構えた結果、ワークマンは業績を伸ばすことに成功しました。
ワークマンの強みである商品に手を加えることなく、ターゲット層を変えただけで利益を出せたのは、Excel経営が功を奏したと言えるでしょう。
Excelに目を付けた理由
ワークマンがExcelに目を付けた理由は「習得するまでのハードルの低さ」にあります。
ワークマンは競合と真正面から戦っていくつもりはなく、あくまでブルーオーシャン市場で、長く経営していく方針です。
そのためには「一部の天才に頼る分析ではなく、平凡な社員でも行える分析」を重要視し、社員自ら考える力をつけてほしいと考えました。
データ分析をするために、最初からAIのような高度なツールを導入してしまうと、データ分析が苦手な社員はついていけません。
そのため、社員全員のデータ経営スキルを底上げするためには、より簡単な方法で学ばせる必要がありました。
Excelは高度な知識を必要としないため、社内で教育を施せば、ほとんどの社員はある程度扱えるようになります。
Excel経営のメリット
現場に沿ったシステムを自作できる
現場で働く社員にExcelの知識があるため『こういう機能がほしい!』と思った時に、社員ひとりひとりがExcelのシステムを作ることが可能です。
実際にExcelを学んだ社員の約3割が、分析ツールを独自に作っています。
現場の声をもとに設計されているため、200種類を超える実用的なシステムが誕生しました。
数多く生まれたシステムのうち、優秀で会社全体で使うべきだと判断された場合は、社内システムとして採用されます。
プロにシステム制作を外注することなく、自分たちで満足度の高いシステムを作れるというのは、大きなメリットです。
店舗ごとに臨機応変に対応できるようになり、支店設置や業態変更がしやすい
ワークマンのようなチェーン店は、地域ごとに顧客層も違うため、売れ筋商品が変わってきます。
店舗それぞれに応じたデータを蓄積していけば、支店ごとに売れ筋商品をいち早く分析し、必要な商品をすぐに補充することが可能です。
ワークマンは2018年に「ワークマンプラス」という、業態を変えた店舗を出しました。
ターゲット層はアウトドア向けですが、商品は全てワークマンで売られていた既存品です。
「ワークマンプラス」を出店した当初は3年ほど赤字になると予想されていましたが、、売れ筋商品をしっかり把握し続けた結果、3か月目で目標の利益に到達できました。
新しい土地に支店を設けたり、業態を変えたい時に、臨機応変に対応できるのはメリットです。
意見交換が活発になる
コミュニケーションが苦手な社員でも、データを根拠にすることで、他の社員に意見ができるようになります。
ワークマンはもともとトップダウン型の会社で、現場の意見があまり反映されない社風でした。
Excel経営によって客観的なデータを元に意見交換が可能になり、上下関係を気にすることなく、平等なコミュニケーションを取れるようになりました。
現場の意見を聞けるボトムアップ型になったことで、変化に対応できる組織になったのは、大きなメリットです。
Excel経営の成果
ワークマンがExcel経営を始め、業務改善に取り組み出したのは、2012年です。
2022年3月期の決算では、純利益は11期連続、営業総収入は12期連続と、それぞれ過去最高を更新しています。
業務改善をしている最中にコロナ禍になり、ワークマンを取り巻くアパレル業界だけではなく、全世界の社会情勢が大きく変わりました。
それでもワークマンが業績を伸ばし続けられたのは、自社の商品に寄り添ったExcel経営を、愚直に取り組んできた成果といえるでしょう。
まとめ
今回はワークマンが導入したExcel経営について解説しました。
高度なAIと違い、Excel経営は導入してから、すぐ売上に反映されるような手法ではありません。
しかし社員全員のExcelスキルを上げ、地道にデータを蓄積することによって、会社が長く安定してビジネスを続けられる基盤になります。
Excelは導入する敷居が低いため、Excel経営はどのような会社でも取り入れる価値がある経営方法だと思います。