統計雑学

内閣支持率と統計学 概要や計算方法を分かりやすく解説

こんにちは!統計ブロガーのにっしーです!

皆さんは、内閣支持率という言葉を聞いたことがありますか。

よくニュースで内閣支持率が上がった、下がったという話があがります。

しかし、内閣支持率はメディアによって違っていたり、そもそもどうやって調べているの?という疑問を持つ方も少なくないかと思います。

そこで今回は、内閣支持率と統計学のつながりについて分かりやすく解説していきます!

この記事を読むと分かること

  • 内閣支持率の調べ方
  • 内閣支持率と統計学のつながり
  • 標本調査について

是非最後まで楽しんで読んでいただければ幸いです!

内閣支持率とは

内閣支持率とは、メディアによって調査される、内閣や政党への支持率を表したものです。

内閣支持率は、各メディアごとに調査されるため、それぞれ数値が異なります。

では、内閣支持率は一体どのようにさいて調査されているのかをご紹介します。

内閣支持率のしくみ

内閣支持率を調べるにあたり、各メディアは世論調査を行っています。

各メディアがどのように調べているか、2021年12月の情報をまとめました。

報道機関調査期間と調査方法
NHK世論調査12/10(金)~12(日)
電話法(固定・携帯RDD)
JNN世論調査12/4(土)・5(日)
固定・携帯電話による聞き取り(RDD方式)
テレビ朝日
世論調査
12/18(土)・19(日)
電話調査(RDD方式)
FNN・産経
合同世論調査
12/18(土)・19(日)
RDD(固定・携帯電話)
NNN・読売新聞社
全国世論調査
12/3(金)~5(日)
固定電話と携帯電話の番号にかけるRDD方式

上の表の通り、内閣支持率の調査では、RDD方式という方法を使って調査が行われています。

RDDとは

RDD方式とは、「ランダム・デジット・ダイヤリング(Random Digit Dialing)」の略で、コンピュータで無作為に数字を組み合わせて番号を作り、電話をかけて調査する方法です。

RDD方式を使えば、電話帳に載ってない番号にも電話をかけられ、調査が可能です。

固定電話と携帯電話の番号の作り方は以下のとおりです。

固定電話の番号は[市外局番]―[市内局番]―[加入者番号]の10桁の数字で構成されています。

実際に使われている上6桁の番号と、0000~9999の範囲でランダムに抽出した下4桁を組み合わせて、10桁の番号を作ります。

上6桁番号は、調査対象地域や電話帳への掲載度合いなどに偏りが出ないよう工夫したうえで、無作為に選びます。

携帯電話の番号は070、080、090から始まる11桁の数字で構成されています。

総務省が公表している各携帯電話会社に割り振られた上6桁の番号と、00000~99999の範囲でランダムに抽出した下5桁を組み合わせて、11桁の番号を作ります。

こうして作った電話番号のうち、使われていない番号を自動判別システムでのぞき、残った番号を調査に使います。

最近では自動音声による世論調査もあるそうです。

ランダムで作られた番号で調査されているのであれば、世論調査は信憑性が高そうですね。

内閣支持率は標本調査

世論調査は、母集団の中からいくつかを標本として抜き出し、そのデータをもとに母集団の特徴を推測しています。

このことを標本調査といいます。テレビの視聴率やアンケート調査も標本調査です。

テレビの視聴率の調べ方が気になる方は「視聴率で学ぶ標本調査の仕組み」をご覧ください。

一方、国勢調査のような母集団をすべて調査対象とするのは全数調査といいます。

建前上、選挙の投票も全数調査です。

全数調査母集団をすべて調査する
標本調査母集団の中から標本を抽出し、そのデータをもとに母集団の特徴を推測する

標本調査のメリット

標本調査は、全数調査と比べて時間・費用・労力をかけずに、母集団の特徴を推測できるというメリットがあります。

母集団が大きければ大きいほど、コストはかかってきます。

学校単位や会社単位であれば全数調査しやすいですが、日本人全員を調査するとなると現実的ではありません。

標本調査のデメリット

ただし、母集団全体の傾向を正確に把握するためにも、標本調査を行う際には母集団から偏りが生じないように抽出する必要があります。

なぜかというと、標本に偏りがある場合、標本誤差が生じてしまいます。そうすると母集団について正しい推測が行うことができません。

さらに、ある程度の標本数は必要になります。

標本数が多ければ多いほど母集団全体の傾向に近づきます。

メリットデメリット
全数調査正しい情報が調べられる
母集団の規模が小さい場合使える
時間・費用・労力がかかる
標本調査時間・費用・労力が全数調査より抑えられる
母集団の規模が大きい場合使える
標本を正しく抽出できないと信憑性が低い

▼全数調査の事例については以下の記事をご覧ください!▼

全数調査の事例10選!標本調査との違いとともにご紹介

▼標本調査の事例については以下の記事をご覧ください!▼

標本調査の事例10選!身近に潜む様々な統計調査をピックアップ!

内閣支持率調査の標本数

現在、日本の有権者数はご存知でしょうか。

2021年10月に行われた衆議院選挙の有権者数は1億562万人でした。

そのうち、世論調査ではどれくらいの標本をあつめているのでしょうか。

こちらも2021年12月のまとめをご覧ください。

報道機関対象と回答数(率)
NHK世論調査調査相手:全国18歳以上 2,093人
回答数(率):1,190人(56.9%)
JNN世論調査全国18歳以上の男女 2,318人(固定1,034人、携帯1,284人)
有効回答:1,217人(52.5%) 
固定610人(59%)、携帯607人(47.3%)
テレビ朝日
世論調査
対象:全国18歳以上の男女1,907人
有効回答率:54.1%
FNN・産経
合同世論調査
全国の18歳以上の有権者1,033人
NNN・読売新聞社
全国世論調査
対象:18歳以上の有権者
固定では有権者在住が判明した730世帯の中から435人
携帯電話では応答のあった1556人の中から653人
1,088人
回答率は固定60%、携帯電話42%

なんと、ほとんどのメディアで標本数は1,000人程度です。

1000人というと、有権者の0.1%です。

しかし、統計学ではこの標本数でもおおよその支持率を算出することが可能です。

この考え方は視聴率の算出方法で考えると分かりやすいので、気になった方は下記記事を読んでいただければと思います。

視聴率と統計学 計算方法や標本調査とのつながりを学ぼう!

それでは実際、内閣支持率はどうなっているのか。

数字を比較してみましょう。

報道機関支持する支持しない答えない・分からない
NHK世論調査50%26%24%
JNN世論調査64%29%7%
テレビ朝日
世論調査
51.3%24.7%24%
FNN・産経
合同世論調査
66.4%26.2%7.4%
NNN・読売新聞社
全国世論調査
62%22%16%

ご覧のとおり、「支持する」だけでも最大16.4%の差があります。

内閣支持率の調査は標本調査のため、標本誤差がどうしても発生してしまいます。

各メディアは、この内閣支持率を毎月調査して公開しています。

これを使って、「前月より〇%上がった下がった」という傾向をつかめるかもしれません。

しかし、誤差が含まれるものであるため、それがそのまま国民の意見だと鵜呑みはせずに、あくまでも参考程度に使うほうがよいでしょう。

RDD方式における注意点

以前は、世論調査は対面方式で行われていることもありましたが、現在ではほとんどがRDD方式をとられています。

しかし、このRDD方式には注意点があります。

実際に自分が調査される側の立場になって考えてみれば非常に分かりやすいのですが、もしあなたが知らない電話番号からの電話がかかってきたらどうするでしょうか。

人によっては、知らない番号からの電話はとらないという方もおられるかと思います。

また、内閣支持率の調査は週末の2、3日間しか電話での調査を行わないので、仕事の関係でその期間家にいないような人に対しても調査を行うことができません。

もっというと、そもそも電話を持っていない家庭は調査対象にもなりません。

つまり、世論調査はあくまでも「電話に出てくれた世帯」を対象としているということです。

このように、RDD方式は無作為なようにみえて、ある種の偏りが含まれた調査結果になるという点には注意が必要です。

バンドワゴン効果

また、内閣支持率の調査にはバンドワゴン効果による影響もないとは言い切れません。

支持・不支持、賛成・反対など、どちらかに傾きかけた世論調査の結果を何回か見聞きすると、無意識のうちに多数派の意見に同調したり、勝ち馬に乗ったりする人が増えてきます。

このことをバンドワゴン効果といいます。

日々のメディアの発信によっては、このようなバンドワゴン効果が起こってしまうという注意点もあります。

ちなみに、バンドワゴン効果は私たちの日常でもよく使われている手法です。

例えば、恋愛であれば「モテる男性はもっとモテる」「友達が好きな人を好きになってしまう」というものがあります。

他にも、SNSであれば「いいね!の多いお店は気になる」「再生回数の多い動画は見たくなる」というのもバンドワゴン効果のひとつですね。

バンドワゴン効果は、行動心理学でもよくつかわれる手法です。

場合によっては、組織が発表する情報や学術論文でさえ、何らかの意図をもって編集されることがあります。

そのため、内閣支持率に限らず、私たちは情報の信憑性について、常に疑問を持って見極める必要があります。

統計学の観点では、標本調査の場合「標本に偏りがないか」という点に注目して調査結果を検証することをおすすめします。

まとめ

今回は、内閣支持率と統計学のつながりについてご紹介しました。、

内閣支持率は、各メディアで独自調査が行われているため数値が異なる、RDD方式で標本に偏りがある可能性がある、というところが特に重要なポイントです。

あくまで参考程度に、そして参考にする場合は1つのメディアの情報だけでなく、複数のメディアの発信する内閣支持率を確認することが重要です。

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  • この記事を書いた人

にっしー

フリーランス3年目の29歳。 専門統計調査士など、統計に関する資格を複数保有。 自分が数学苦手だった文系だからこそ書ける、分かりやすい情報発信を心がけています。 著書『これから学ぶ人のための統計学超入門』 寄稿実績『知識ほぼゼロからデータ分析の専門家になる(週刊東洋経済)』、『50歳からの学び直し入門 (インターナショナル新書)』(一部)

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