統計学

両側検定と片側検定の違いとは 検定の基本を具体例で分かりやすく解説

こんにちは!統計ブロガーのにっしーです!

今回は、統計学の学び始めでよくつまずく、仮説検定における両側検定と片側検定の違いについて解説していきます。

どちらを使うかによって、仮に有意水準が同じ場合でも、どちらの検定を採用したかによって結果が変わってくることがあります。

そのため、その使い分けには慎重な判断が必要です。

この記事では、2種類の検定の特徴や違い、使い分けの方法を具体例とともに解説していきます。

是非この機会に検定に関する知識を身につけておきましょう!

この記事を読むと分かること

  • 統計学における検定とは
  • 片側検定とは
  • 両側検定とは
  • 片側検定と両側検定の違い

最後まで楽しんで読んでいただけますと幸いです!

統計学における検定とは

統計学における検定は、仮説検定とも呼ばれています。

仮説検定では、以下のように結論が導かれます。

  1. 初めに仮説を立てる。
  2. その仮説が正しいという条件の下で、実際に起きた結果が起こる確率を求める。
  3. 矛盾が起こってないか検証を行い、結論を導く。

このとき最初に立てる仮説は「帰無仮説」と呼ばれており、これが正しいと仮定した上で実際起きた結果について確率的に検証を行い、矛盾が生じた場合は仮説が間違っている(帰無仮説が棄却される)と結論付けます。

これは背理法と呼ばれる方法で、統計的仮説検定で一般的に採用されています。

そして、この仮説が間違っているかどうかを判断するための基準が「有意水準」と呼ばれています。

例えば、有意水準5%の仮説検定について考えてみましょう。

このとき、帰無仮説が正しいという前提で実際に観測された結果が起こる確率を検証したところ、その確率が5%以下だった場合は帰無仮説が棄却されます。

つまり、「確率的にかなり珍しいことが起きているため、帰無仮説が正しいという仮定は無理がある」と判断し、帰無仮説の否定である対立仮説が採択されることになります。

片側検定とは

片側検定とは、帰無仮説を立てたときに棄却域を確率分布の片側だけに設定する検定です。

例えば、母平均(μ0)の検定を行う場合を考えてみましょう。

この場合、帰無仮説と対立仮説を以下のように立てたとします。

帰無仮説:μ=μ0
対立仮説:μ>μ0 または μ<μ0

この場合、対立仮説が「μがμ0より大きいか、または小さいか」のどちらかであるため、確率分布の片側だけに棄却域を設定することになります。

有意水準5%で対立仮説がμ>μ0 であれば、確率分布の右側である95パーセント点に有意水準を設定し、実際に観測された結果の起きる確率がその水準を超えるものだった場合は棄却域に入るため帰無仮説が棄却され、対立仮説が採択されます。

これが片側検定です。

片側検定の利用場面(例)

例えば、食品Aを摂取後に体重が減少するかどうかを検証するために、ある母集団から無作為抽出した成人男性50人を対象に3週間食品を毎日摂取してもらい3週間後に体重がどのように変化しているかを調べる実験を行ったとします。

実験終了後の体重から実験開始前の体重を引いた値について、母集団の母平均をμとします。

このとき、帰無仮説はμ=0とすることで「実験開始前と開始後で体重に変化がない」と設定することになります。

一方、この検定では「食品Aを摂取することによって体重が減少しているかどうか」を知りたいため、対立仮説はμ<0(体重が減少している)と設定すれば良いことがわかります。

つまり、この調査では体重が減っているかどうかにしか興味がないため、片側検定で足りることになります。

両側検定とは

両側検定とは、帰無仮説を立てたときに棄却域を確率分布の両側に設定する検定です。

例えば、片側検定と同様に母平均(μ0)の検定を行う場合を考えてみましょう。

この場合、両側検定では帰無仮説と対立仮説を以下のように立てます。

帰無仮説:μ=μ0
対立仮説:μ≠μ0

この場合、片側検定のときは対立仮説が「μがμ0より大きいか、または小さいか」のどちらかであったのに対し、両側検定では対立仮説が「μは母平均μ0と等しくない」と立てられることから、μがμ0より大きい場合と小さい場合の両方を考慮することになるため、確率分布の両側に棄却域を設定することになります。

両側検定の利用場面(例)

例えば、ある食品メーカーが製造している食品Aの内容量の表記が150gだったとします。

この記載されている量が統計学的に正しいのかを検証する場合を考えてみましょう。

そこで、工場で生産された食品Aを無作為に100個抽出し、その内容量(質量)をそれぞれ測ったとします。そこで得られた標本平均は149.5gで、不偏分散は0.2でした。

有意水準5%で内容量が記載どおり150gであるといえるかどうか仮説検定を行う場合を考えます。

初めに帰無仮説は「母平均が150gである」と設定します。

次に対立仮説についてですが、この場合は内容量の母平均が記載通りの150gであるかどうかに関心があり、それより多いか少ないかは興味の対象ではないとしましょう。

そうすると、対立仮説は「母平均は150gではない」と設定されることになります。

つまり、この場合は母平均が150gより多くても少なくてもどちらでも良いことになりますので、両側検定が妥当であることがわかります。

片側検定と両側検定の違い

片側検定と両側検定は、確率分布において棄却域を片側のみに設定するか、両側に設定するかの違いがあります。

さらに、その違いから両側検定の方が片側検定に比べて水準が厳しい検定になることがわかります。

例えば、同じ有意水準5%の場合でも、片側検定は左右どちらか一方のみに5%の棄却域を設定しますが、両側の場合は左右両方に2.5%ずつ棄却域を設定します。

つまり、これは両側検定で帰無仮説が棄却されるためには、実際に観測された結果が、片側検定のときよりも確率的に大きく外れていないといけないことを意味しています。

したがって、同じ有意水準であっても、両側検定か片側検定のどちらを選ぶかによって、有意性の判断が変わってくることがあるため注意しなければいけません。

まとめ

この記事では、仮説検定における両側検定と片側検定について解説しました。

どちらを採用するかで結果が変わってくることがあるため、その調査や実験で「最終的に知りたいこと」や「興味の対象がどこにあるか」をしっかり理解する必要があります。

状況をしっかり確認した上で、どちらの検定が適切か判断するようにしましょう。

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  • この記事を書いた人

にっしー

フリーランス3年目の29歳。 専門統計調査士など、統計に関する資格を複数保有。 自分が数学苦手だった文系だからこそ書ける、分かりやすい情報発信を心がけています。 著書『これから学ぶ人のための統計学超入門』 寄稿実績『知識ほぼゼロからデータ分析の専門家になる(週刊東洋経済)』、『50歳からの学び直し入門 (インターナショナル新書)』(一部)

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