今回は、高校教育における統計学の必須化についてまとめてみました。
この記事を読むと、以下のことが分かるようになります!
この記事を読むとわかること
- 高校教育で統計学が必須化になった経緯
- 大学受験の時に気を付けるべきポイント
- 高校教育で統計学に関する新しい分野の内容
高校教育で統計学が必須になる理由
2018年3月、高等学校学習指導要領が改訂され、統計学が必須化しました。
文部科学省から出されている数学科改訂の趣旨には、以下のように書かれています。
社会生活などの様々な場面において,必要なデータを収集して分析し,その傾向を踏まえて課題を解決したり意思決定をしたりすることが求められており,そのような資質・能力を育成するため,統計的な内容等の改善・充実を図った。このような改訂の方向は,現在,米国等で推進が図られている STEM 教育の動きと同一の方向であると考えられる。
(引用 【数学編 理数編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 )
また、具体的に変更された科目については、以下の通りです。
Q. 統計教育の充実について具体的に教えてください。
A. 社会生活などの様々な場面において,必要なデータを収集して分析し,その傾向を踏まえて問題を解決したり意思決定をしたりすることが求められていることから,高等学校数学科では,そのような資質・能力を育成するため,必履修科目である「数学Ⅰ」や「数学A」,「数学B」において統計的な内容等の改善・充実を図りました。
(引用 平成30年改訂の高等学校学習指導要領に関するQ&A(数学に関すること) )
要するに『国際競争力を高めるために、ITや科学技術を学び、それを踏まえて新たな価値をつくれる優れた人材を育成したい』という目的で、高校教育で統計学を強化するようです。
高校教育の統計学が必須になるタイミング
ここからは、高校教育の統計学が必須になるタイミングについて解説します。
2022年4月で高校1年生になった生徒から
学習指導要領が実際に適用され「統計的な推測」が必要になるのは、2022年4月時点で高校1年生になった人が対象です。
2022年4月時点で高校2年生以上の人は旧課程のまま授業が進みます。
「新課程をやり直さないと卒業できない!」なんてことはないので、ご安心ください。
共通テストへの影響は2025年度から
新課程は2022年4月から適用されるため、その時点で高校1年生の人が高校3年生になったタイミングに合わせて、共通テストの出題範囲も変化します。
そのため2025年度共通テスト(2025年1月実施)までに受験をして大学進学を決める学生は問題ありません。
ただ、あくまでストレートに進級する前提でスケジュールが組まれているので、浪人生の場合はどうしてもズレが生じます。
その場合は新しく勉強し直す必要が出てくるので、注意が必要です。
統計学の必須化が高校生・大学受験生へもたらす影響
ここからは、統計学の必須化が高校生・大学受験生へもたらす影響について解説します。
理系に進みたい学生が気を付けるべきこと
理系の学生が気を付けるべきことは、今回の目玉である「統計的な推測」についてです。
「統計的な推測」は旧課程にもあった項目ですが、新課程になったことで少し内容が変化しています。
旧課程では「確率分布と統計的な推測」という名称だった分野が、新課程では「統計的な推測」と名称が短くなったため、一見中身が少なくなったように感じる人もいるでしょう。
実際には「期待値」という確率に関する分野が減りましたが、数Aに移動しただけなので履修時期が早まっただけです。
「期待値」以外の確率に関する分野は残ったままなので、ほとんど変わらないと言えるでしょう。
しかし「確率分布と統計的な推測」を学んだ上級生がほとんどいない上、教師も教える機会が少なかったと推測されます。そのため、理解が難しい部分を教わるには少し苦労するかもしれません。
また、新課程では以下の内容を新規で扱います。
- 区間推定
- 仮説検定
- 有意水準
文系に進みたい学生が気を付けるべきこと
文系の学生は、旧課程より学習量が多くなります。
旧課程の大学入学共通テストで数学が2科目必要な場合、数Bの内容が含まれるのは「数Ⅱ・数B」のみでした。
しかし新課程では、「数Ⅱ・数B・数C」と、今まで無かった数Cが加えられているため、勉強しないといけない科目が増えています。
旧課程は以下3つの中から2つ選択する形式でした。
- ベクトル
- 数列
- 確率分布と統計的な推測
しかし、新課程では数Bに含まれる「数列」「統計的な推測」と、数Cに含まれる
「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」の、計4つの中から3つ選択しなければなりません。
しかもこの「平面上の曲線と複素数平面」は、旧課程では数Ⅲに含まれていました。
今までセンター試験、共通テストで数Ⅲの範囲が出題されたことはないので、文系学生からすると数Ⅲはあまり縁がないものでした。
しかし新課程で数Cに移動してきたことにより、文系の学生でもより幅広く数学の分野について学ぶ必要が出てきます。
「数学や理科が苦手だから、文系に進みたい」という学生もいると思いますが、文系にもどんどん数学を学ばせる流れがきているので、苦手意識があると大変でしょう。
高校教育の統計学の主な学習内容
「統計的な推測」の学習内容は、以下の通りとなっています。
- 前半~中盤:確率に関するもの
- 後半:統計に関するもの
今回は後半の統計に関するものの中から、新たに追加された「区間推定」と「仮説検定」の学習内容について解説します。
区間推定
ここからは「平均値」を例として、区間推定の説明をします。
全国に生息している鳩の平均サイズを求める際、一番望ましいのは、全国に生息している全ての鳩を調べることですが、現実的ではありません。
そこで『△△から◇◇までの間に平均が含まれるだろう』という推定をして、おおよその範囲を平均として捉えます。
この考え方が区間推定です。
例として、近くにいる鳩5羽のサイズが以下の通りだった場合、『全国に生息している鳩の平均サイズ値は、高確率で29.7cm~33.4cmの間にある』と推定されます。
- 29.0cm
- 30.0cm
- 31.0cm
- 33.0cm
- 35.0cm
ここではイメージを掴むために大雑把な説明になりましたが、区間推定を統計のデータとして使う場合は、少し複雑な計算が必要になります。
区間推定について、詳しくは以下の記事で解説しています!
区間推定における信頼区間とは何か 特徴や求め方について分かりやすく解説
仮説検定
仮説検定とは「ある仮説を立てて、正しいのか否かを統計学的に検証する」という、推計統計学の一つです。
「検定」の身近な例として、漢字検定や英語検定などがあります。
これらの「検定」は「合格点」という基準を元に、「合格」「不合格」を決めています。
仮説検定も同じように、ある基準を元に「有意差がある」「有意差がない」という結論を導きます。
ただ仮説検定というものは「合格」「不合格」のように白黒つけられる訳ではなく「合格ではないけれど、だからといって不合格とは言い切れない」のような結論になります。
仮説検定について、詳しくは以下の記事で解説しています!
まとめ
高校教育における統計学が必須化されるにあたって、現役高校生が受験勉強の際に気を付けるべきことについて、詳しく紹介しました。新しく追加された統計学の項目を把握しておかないと、大学入学共通テストで対応できなくなってしまいます。
統計学は難しそうな印象を持つ方も多いでしょうが、理解できるととても面白いので、ぜひ楽しみながら学んでみてください!
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