池や湖にいる魚の数を調べる方法
池や湖にいる魚の数を調べる場合、あなたならどのような方法で調べますか?
正確な魚の数を調べる方法として、一匹ずつ捕獲して数える方法(=全数調査)があります。
しかし、この方法では、そもそも池や湖にどのくらいの魚がいるか分からないため、いつまで数えればいいか分かりません。仮に一匹ずつ捕獲して数える場合、莫大な時間と労力がかかり、とても現実的ではありません。
そこで、標本調査を活用することで、全数調査することなく池や湖にいる魚の数を調べることができます。
標本調査とは、「調査対象からサンプル(標本)を抽出し、抽出したサンプルを調査することで調査対象全体(母集団)の特徴を調べる方法」です。
この標本調査の説明に「池や湖にいる魚の数を調べる方法」を当てはめてみると、「池または湖の中から、一部の魚(標本)を捕獲、調査することで、池や湖にいる全ての魚(母集団)の数を推定する」という内容になります。
具体的にどのような調査の手順となるのか、次項より解説していきます。
2. 具体的な調査手順
具体的な調査手順は、以下の3つになります。
一部の魚(標本)を捕獲し、簡単な計算を行うことで、池や湖にいる全ての魚の数(母集団)を推定することができます。
①一部の魚を捕獲し、目印をつけて池に戻す
②再び一部の魚(標本)を捕獲する
③目印をつけた魚の割合から、全ての魚(母集団)を推定する
それでは各調査手順の内容を解説します。
この調査手順では、例として「池」にいる魚とします。
①一部の魚を捕獲し、目印をつけて池に戻す
まず始めに、池の中から一部の魚を捕獲し、なんらかの目印をつけて池に戻します。
(実際には魚の背びれ付近などに、目印をつけたりします)
ここでは、仮に100匹の魚を捕獲でき、目印をつけたとします。
②再び一部の魚(標本)を捕獲する
①の翌日以降(目印をつけた魚が池全体に混じったと考えられた後)に、池の中から再び一部の魚(標本)を捕獲します。仮に80匹の魚を捕獲できたとして、その中に目印をつけた魚が20匹いたとします。
③目印をつけた魚の割合から全ての魚(母集団)の数を推定する
池にいる全ての魚の数(母集団)をNとし、目印をつけた魚の数の割合を整理すると、以下の表のようになります。
①全ての魚(母集団)に対する目印をつけた魚の割合 | ②再捕獲した魚(標本)に対する目印をつけた魚の割合 | |
全て/再捕獲した魚 | N匹 | 80匹 |
目印をつけた魚 | 100匹 | 20匹 |
割合 | 100/N | 20/80=¼ |
ここで、目印をつけた魚が池の中に均一に混じっている状態であれば、①と②の目印をつけた魚の割合は等しいと考えられます。
全ての魚の数N(母集団)は、以下の式で計算します。
100/N = ¼
N = 100×4
= 400匹
計算の結果、池にいる全ての魚の数(母集団)は、400匹と推定することができます。
また、他の計算方法として、比率によっても計算することができます。
全ての魚の数(母集団)をNとすると、
全ての魚の数N(母集団):目印をつけた魚の数
= 捕獲した一部の魚(標本):目印をつけた魚の数
となり、以下の比例式で計算します。
N:100 = 80:20
20N = 8000
N = 400匹
計算の結果、池にいる全ての魚の数(母集団)は、同じく400匹と推定することができます。
このように全数調査することなく、標本調査を活用することで母集団の数を推定することができます。
捕獲再捕獲法(標識再捕獲法)
今回紹介した標本調査による「池や湖にいる魚の数を調べる方法」は、捕獲再捕獲法(または標識再捕獲法)と呼ばれます。
外来種の個体数や、その侵入による在来種の個体数変化などを把握するために、用いられています。
ただし、この捕獲再捕獲法を用いる場合の注意点もあり、調査対象の個体数が多過ぎる、行動範囲が広過ぎる、または全く行動しないなどであれば、正しく推定することができない可能性もあります。
今回の「池」にいる魚についても、あくまで目印をつけた魚が池に均一に混じっていることが前提であり、母集団の数は推定に過ぎず、誤差があることを頭に入れておかなければいけません。
そのため、個体の特性を把握し、母集団の推定にどのくらいの精度が必要なのかを明らかにした上で、どのくらいの標本を捕獲するのか、そもそも標本調査で良いのかなどを考える必要があります。
3. まとめ
本記事では、標本調査の活用事例として「池や湖にいる魚の数を調べる方法」の具体的な調査手順を解説しました。
池にいる全ての魚(母集団)と一部の魚(標本)の数に対する、目印をつけた魚の数の割合が等しいと考えられる場合、全ての魚(母集団)の数を推定することができます。
今回の事例のように標本調査は、身近なところで活用されており、視聴率や選挙の出口調査、アンケート調査などもその活用事例の一つです。
あなたの身の回りで行われている標本調査も探してみてください。
<参考記事>