統計学

全数調査の事例10選 概要や標本調査との違いを分かりやすく解説

こんにちは。統計ブロガーのにっしーです!

今回の記事では、統計調査のなかでも正確な調査結果を把握しやすい全数調査について、具体的な事例とともにご紹介していきたいと思います。

この記事を読むと、以下のことが分かるようになります!

この記事を読むと分かること

  • 全数調査とは
  • 標本調査との違い
  • 全数調査の事例10選

是非最後まで楽しんで読んでいただければ幸いです!

全数調査とは

全数調査とは、調査対象となる集団の全てを調査する方法です。別名として、悉皆(しっかい)調査や全部調査とも呼ばれます。

全数調査は、調査対象の数が全て調べきれる程度の莫大でない場合や、全ての対象を調べなければ意味がないような調査に活用されます。

また、調査対象が莫大な数であっても、全数調査を行わないと何かしらの危険性が伴う場合は全数調査が行われます。

そのため、健康診断や乗り物や建物の点検調査など、全ての対象を調べないと人に害を及ぼす可能性がある調査には全数調査が用いられます。

全数調査のメリット

全数調査では調査対象全てを調査するため、誤差のない正確な調査結果を得られます。

また全数調査を用いる場合、調査対象がどのような区分に分けられていてもそれら全てを調査することには変わりないため、調査対象の区分形態に柔軟に対応できます。

全数調査のデメリット

全数調査は、1回の調査に莫大な時間と労力がかかることが多いです。

調査対象の規模が小さい場合は、調査コストや調査時間を抑えられます。

しかし、調査対象が県内全域や国内全てのような大規模である場合、1回の調査に数ヶ月、数億円の時間やコストがかかる可能性があります。

全数調査と標本調査の違い

全数調査と比較される調査方法に、標本調査と呼ばれる調査方法があります。

標本調査とは、調査対象から一部を標本(サンプル)を抽出し、抽出した標本を調査することで調査対象全体の特徴を調べる調査方法です。

標本調査を用いる場合、調査対象が大規模であっても時間やコストをかけずに調査することができます。

しかし、標本調査は調査対象の一部のみを調べるため、調査結果と調査対象の実態に誤差が生じる可能性があります。

標本調査は大規模な調査対象への調査や、調査結果に多少の誤差が出ても問題がない場合によく用いられます。

また、全数調査を行ってしまうとその後の工程に支障が出てしまう場合にも、標本調査が行われます。

例えば、工場で生産された商品の品質点検に全数調査を行ってしまうと、商品として売り出す製品が手元に残りません。そのため、商品の品質点検には標本調査が用いられます。

なお、全数調査と標本調査の違いをまとめると以下のようになります。

全数調査標本調査
調査方法調査対象に含まれるもの全てを調査する調査対象から一部を抽出して調査する
メリット正確な調査結果を得られる規模の大きな調査対象を効率的に調べられる
デメリット調査にかかる時間やコストが大きい調査結果に大きな誤差が生まれる可能性がある
使用用途・小規模な調査対象の調査
・調査対象全てを調べる必要のある調査
・大規模な調査対象の調査
・調査結果に多少の誤差が生まれても大きな問題にならない調査

全数調査の活用例10選

ここからは、全数調査の活用例を10選紹介します。

1 国勢調査

全数調査を活用した調査の代表例が、国勢調査です。

国勢調査では日本に住む全ての人を調査対象に、世帯人数や住居の種類、生年月日、就業状況などを調査します。

日本に住む全ての人を対象にした全数調査ということもあり、国勢調査は1調査当たり約2,920億円もの調査費用がかかります。

国勢調査には莫大な費用がかかるため、国勢調査が実施されるのは5年に1回です。

2 健康診断

学校や会社で行われる健康診断も、全数調査に含まれます。

健康診断は組織に属する人の体に、病気や異変がないかを調べることを目的としています。

そのため、健康診断の対象者全員を調べなければ、目的を果たしたとは言えません。

3 手荷物検査

空港などで行われる手荷物検査も、全数調査の一つです。

手荷物調査は、危険物が特定の場所に持ち込まれることを防ぐために行われる調査です。

危険物が一つでも持ち込まれてしまうと手荷物調査の目的が果たされないため、手荷物調査では調査対象全てを調べます。

4 満足度アンケート調査

新商品や新サービスなどの満足度アンケート調査にも、全数調査が活用されることも多いです。

満足度アンケート調査の調査対象は、商品やサービスの利用者に限られるため、調査対象の規模は大規模になりづらいです。

そのため、全数調査が活用されることが多いということですね。

ただし、商品やサービスの利用者数が莫大で、全ての利用者に対してアンケートを行えない場合などには、利用者の一部を抽出して調査する標本調査が行われます。

会社や商品、サービスなどの規模によってもどちらの調査を行うか変わってくるところです。

5 企業の入社試験

企業の入社試験も全数調査と言えます。

企業の入社試験では入社希望者全員に対して、書類選考や筆記試験、面接が行われます。

企業が入社希望者全員を対象に選考を行わない場合、それは大きな問題と言えるでしょう。

企業の入社試験の他にも、入学試験や入団試験のような組織に属する人を決める行為は、基本的に全て全数調査です。

6 校内学力テストの結果分析

校内学力テストの結果分析も、全数調査の一つです。

校内学力テストでは、テストを受けた生徒全員の点数や順位、偏差値などが算出されます。

特に順位や偏差値などは、テストを受けた生徒全員の結果を分析しないと算出できないため、全数調査が用いられています。

校内学力テストに限らず、テストを受けた全員に対して順位や偏差値などを算出する場合、それらの行為は全数調査と言えます。

7 乗り物の安全点検

遊園地などで行われる乗り物の安全点検も、全数調査の一つです。

乗り物の安全点検の目的は、乗客の安全を確保することです。

安全点検の対象であるのに安全点検が行われていない乗り物が一つでもあると、乗客の安全を確保できません。

そのため、乗り物の安全点検は全数調査である必要があります。

また乗り物だけでなく、使用時に危険が伴う道具や器具などの点検も全数調査である必要があります。

8 病気の実例調査

病気の実例調査にも、全数調査が活用されます。

病気は同じ病名であっても、人によって病状は少しずつ異なります。

ある病気について調査する際、病気にかかった全ての患者の実例を把握しなければなりません。

そのため、病気の実例調査は全数調査である必要があります。

9 店舗の商品売り上げ数調査

店舗の商品売り上げ数調査も、全数調査の一つです。

商品の売り上げ数を正確に把握するためには、どの商品がどの程度売れたのかを全てチェックしなければなりません。

そのため店舗の商品売り上げ数調査は、自ずと全数調査になります。

なお、店舗数が多い企業や規模が大きい店舗ほど、商品の売り上げ数調査にかかるコストや時間は大きくなります。

10 イベントの動員数調査

コンサートやライブなどのイベントの動員数調査も、全数調査の一つです。

イベントの動員数を調べるためには、イベントに来た来場者全員をカウントしなければなりません。

そのためイベントの動員数調査は、自ずと全数調査になります。

まとめ

本記事では、全数調査の概要やメリット、デメリット、全数調査と標本調査の違い、全数調査の活用例について解説しました。

全数調査は調査対象全てを調べる、非常に正確な調査方法です。

そのため全数調査は、調査にミスが許されないような、調査結果の正確さが求められる調査に活用されます。

全数調査や標本調査を用途によって使い分けられると、調査対象を正確かつ効率的に調査できます。

本記事を読んで全数調査や標本調査を活用したいと考えた方は、これらの調査方法について学んでみてはいかがでしょうか。

また、本記事をきっかけに統計学やデータ分析に興味を持った方は、ぜひ深く学んでみてください。

(参考サイト)

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  • この記事を書いた人

にっしー

フリーランス3年目の29歳。 専門統計調査士など、統計に関する資格を複数保有。 自分が数学苦手だった文系だからこそ書ける、分かりやすい情報発信を心がけています。 著書『これから学ぶ人のための統計学超入門』 寄稿実績『知識ほぼゼロからデータ分析の専門家になる(週刊東洋経済)』、『50歳からの学び直し入門 (インターナショナル新書)』(一部)

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