今回はマーケティングリサーチ会社でのデータ分析の活用方法についてご紹介します。
本記事では、マーケティングリサーチ会社におけるデータ分析についてご紹介します。
- マーケティングリサーチ会社におけるデータ分析の特徴
- マーケティングリサーチ会社のデータ分析の主な手法
- マーケティングリサーチ会社でデータ分析を行う際のポイント
マーケティングリサーチ会社におけるデータ分析の特徴
マーケティングリサーチ会社におけるデータ分析では、マーケティングに関する課題に対して有効な意思決定をサポートするために科学的な分析を行います。
そもそもデータ分析とは様々な手法でデータを収集・整理・加工等をした後に分析を行うことを指しますが、マーケティングリサーチ会社では対象の商品やサービスに対して主に下記の5点を明らかにするためにデータ分析を行います。
- どのような人(例:学生やサラリーマン等の属性、または年齢層)をターゲットにすべきか<ターゲット層の特定>
- 利用者は満足しているか<顧客満足度>
- 価格はいくらにすべきか<価格設定>
- 競合との違いは何か<ブランド価値の認知、今後のブランディングにおける情報収集>
- 実施したキャンペーンやイベントの効果はどの程度あったか<PR効果の確認>
これらをデータ分析によって明らかにすることで、現在の市場における対象商品やサービスの立ち位置や利用者からの需要、今後の改善課題等を把握でき、マーケティングリサーチにおける有効な意思決定のサポートにつなげることができます。
マーケティングリサーチ会社のデータ分析の主な手法
- クラスター分析
- PSM分析
- ポートフォリオ分析
では、それぞれの詳しい手法について見ていきます!
クラスター分析
データの中でお互いに似たもの同士を収集しクラスター(集落)を作り、対象をそれぞれ分類していく手法です。
クラスターに分類後はクロス集計を行うことでデータの特徴を把握することもできます。
ほかにも、マーケティングリサーチにおいてはターゲット層の特定やアプローチ方法を探るために使用されることもあります。
PSM分析
商品やサービスの適正な価格帯を分析する手法です。
特にマーケティングリサーチでは、Product(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(販売促進)の4つのPを押さえた売り手目線が必要不可欠のため、価格設定に関わるPSM分析は重要な分析手法になります。
PSM分析では具体的に、上限価格・下限価格・妥協価格・理想価格を導き出すことで、どの価格帯ならターゲット層に最も受け入れられるかをリサーチすることができます。
※PSMとはPrice Sensitivity Meterの略で「価格感度メーター」と訳します。
ポートフォリオ分析
対象商品やサービスの総合満足度とカテゴリー別の満足度(例:利用のしやすさ、購入しやすい価格かどうか等)から、改善項目を抽出する分析手法です。
例えば、カテゴリー別の満足度を縦軸、総合満足度とカテゴリー別の満足度の相関係数を横軸に据えることで、各項目をプロット化して改善すべき項目を明らかにすることができます。
そして、改善項目(総合満足度と強く相関しているにも関わらず、現状の満足度が低い項目)の抽出を行い、マーケティングリサーチにおいても重要な改善施策立案等の判断資料にします。
マーケティングリサーチ会社におけるデータ分析の活用事例
クラスター分析の活用事例(飲食店での事例)
飲食店における料理のメニューでクラスター分析を行い、セットメニューを考案した事例です。
来店客にお店の料理についてアンケートを取ることでクラスター分析をします。そして、各グループ分けされたメニューの中からセットメニューを考案したり、類似性の高いメニューを組み合わせたりすることで、既存のものよりもメニューの幅を広げることが可能です。
PSM分析の事例(家具・生活雑貨メーカーでの事例)
家具・生活雑貨メーカーでは、消費者ニーズを反映して製作した製品をリーズナブルな価格で販売したことから売上アップにつながっています。
PSM分析では、高すぎて手が出ない価格(上限価格)、安すぎて不安に思う価格(下限価格)、
高いと感じ始める価格(妥協価格)、安いと感じ始める価格(理想価格)の4つの価格を消費者アンケートや各属性・年齢層の購買履歴等から分析し適正価格を算出します。また、同メーカーでは、企画・デザイン・製造・販売までの流れを企業内で完結することでコストを抑えました。その結果、低価格で高品質の商品を提供することでリピート顧客やファンを増やし競合店にはない独自の立ち位置を確立しました。
ポートフォリオ分析の事例(スーパーマーケットの事例)
あるスーパーマーケットでは、総合満足度・価格の妥当性・品切れについての満足度等の各項目に対する評価をリサーチしポートフォリオ分析を行いました。すると、品切れに関する満足度が低く、総合満足度との相関も強いことが分かりました。
まずは早急に品切れに関して改善行動を行った上で、ポートフォリオ分析における重点維持項目についても満足度の水準を向上する伸びしろがあると判断しました。ポートフォリオ分析を通して、今後の改善施策の取組みについて方向性を示すことができた事例です。
マーケティングリサーチ会社でデータ分析を行う際のポイント
- 分析を行う目的を明確化する
- データの背景や性格を確認しながらデータを収集する
- 収集したデータ全体の概要や各グループの差異を掴む
- 目的に沿ったデータ分析手法で原因と結果をリサーチ
- 数値以外の要素も加味して分析結果の解釈をまとめる
具体的に各ポイントについて見ていきましょう!
分析を行う目的を明確化する
マーケティングリサーチを行う目的と重なることが多いですが、まずは分析の目的を固めることが重要です。この目的をもとに分析手法と必要なデータの形式を決定することができます。
データの背景や性格を確認しながらデータを収集する
次に目的に沿ってデータ収集を行います。その際は収集したデータの背景や性格を必ず確認しなければなりません。具体的にはデータ分析に影響を与える値や異常値や、欠損値等がないかを確認します。そのようなデータがあったら、異常値や欠損値等の取り扱いについて決定する必要があります。誤った分析結果を出さないためにも、慎重にデータを収集することが不可欠になります。
収集したデータ全体の概要や各グループの差異を掴む
データ収集が終わったら、特に数万件以上にも及ぶ大量のデータ群の場合には単純集計等で全体の概要を確認することで分析の方向性を掴むことができます。
データをあるグループごとに分けた時に、それぞれどのような差異があるかを確認するためにクロス集計を行います。その結果をもとに、データ上の原因と結果にどのような関係があるのか見えてくるはずです。
目的に沿ったデータ分析手法で原因と結果をリサーチ
このような結果になったのはなぜか、原因には複数の要因が関係していないか、新たな施策となるヒントはどこにあるか等の深堀を行っていきます。マーケティングリサーチにおける分析工程でも特に重要であり、顧客への有効な意思決定につなげることができるかどうかはこの作業にかかっています。リサーチ設計時に設定した「どのようなことを明らかにしたいか」が明確になっていれば、目的に合う分析手法を選択し適正な分析結果を出すことができます。
数値以外の要素も加味して分析結果の解釈をまとめる
最後に分析結果の解釈をまとめますが、たとえ適切な集計を行い誤りなくデータを読み取れたとしても、分析結果の数値だけでは原因と結果について断言できない場面もあります。例えば、クロス集計や相関係数等を求め2つの変数に関係があったとしても、原因と結果が相互依存している場合、複数の要因が関係し見かけだけ関係を示している場合、別の要因が考えられる場合等があるからです。そのため、実務上や第三者からの検討等も行った上で分析結果を解釈することが非常に重要です。どんな分析結果になったとしても、最後まで多面的に確認を行いながら解釈をまとめていきます。
マーケティングリサーチ会社でデータ分析をするのに必要なスキル
計数感覚
データ分析では単純な定量的なデータ処理能力はもちろん、定性的な計数感覚も求められます。特にマーケティングリサーチ会社では、計数感覚があれば再集計のリスクを減らすことができます。例えば、見逃してしまいがちなデータ上の数値に対する違和感がきっかけとなって集計時に該当の数値処理ができるといった対応にもつなげることができます。
分析ツールの活用スキル
マーケティングリサーチ会社ではRやPython、ASSUM、ExcelのBIツール等の分析ツールを使用する機会があります。これらのツールをあらかじめ駆使できていれば重宝されますが、こうしたツールは業務を行っていく上で自然と身につけていくことも可能です。
基本的な統計知識
分析結果の解釈をまとめる際の各値の理解をするためとしてはもちろん、マーケティングリサーチを依頼した顧客に対しても統計学に基づいた客観的な分析結果を報告できます。その際には聞く相手の理解度に応じて統計知識を活用することも大切です。
まとめ
本記事では、マーケティングリサーチ会社におけるデータ分析の特徴、マーケティングリサーチ会社のデータ分析の主な手法、マーケティングリサーチ会社でデータ分析を行う際のポイントについて解説しました。
マーケティングリサーチ会社では顧客ニーズに応じて様々な手法を用いながらデータを分析しています。
「マーケティングリサーチ会社に関心がある!」「将来マーケティングに携わってみたい!」という方がいれば、マーケティングリサーチ会社特有のデータ分析手法についてさらに知識を深めてみてくださいね。