今回は、私たち国民にとってもかかわりが深い、基幹統計調査についてご紹介します!
国が行う大切な調査である基幹統計調査ですが、一体どんな種類があるのか、などは意外と知られていないことが多いかと思います。
そこで今回は、一般統計調査との違いも踏まえて、詳しく解説していきます。
是非この機会に統計調査に関する知識を身につけておきましょう!
この記事を読むと分かること
- 基幹統計調査とは何か
- 基幹統計調査と一般統計調査の相違点
- 基幹統計調査に該当する主な調査
- 基幹統計調査に分類される調査の特徴
最後まで楽しんで読んでいただけますと幸いです!
基幹統計調査とは
基幹統計調査とは、国の行政機関が行う統計調査のことで、統計法で指定されています。
統計法で指定されている統計調査は基幹統計調査のほかに一般統計調査、指定地方公共団体または指定独立行政法人等が行う統計調査がありますが、その中でも特に重要とされているのが基幹統計調査です。
統計法で定められている基幹統計調査の内容
基幹統計調査は統計法で主に以下の内容が定められています。
①基幹統計調査の承認
行政機関の長は基幹統計調査を実施する際は事前に総務大臣の承認を受けなければなりません。
②報告義務
行政機関の長は基幹統計調査を実施する際は基幹統計の作成のために必要な事項について個人または法人その他の団体に対して報告を求めることができます。
③統計調査員
行政機関の長は基幹統計調査の実施のため必要がある際は統計調査員を配置することができます。
④立入検査等
行政機関の長は、基幹統計調査の正確な報告を求めるため、当該基幹統計調査の報告を求められた個人または法人その他の団体に対してその報告に関する資料の提出を求めることができます。
ほかにも統計調査員その他の職員に必要な場所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることや関係者に質問させることができます。
⑤地方公共団体が処理する事務
基幹統計調査に関する事務の一部は地方公共団体の長または教育委員会が実施することができます。
⑥基幹統計調査と誤認させる調査の禁止
基幹統計調査の報告の求めであると人を誤認させるような表示や説明をすることにより、個人または法人その他の団体の情報を取得してはなりません。
一般統計調査との違い
統計法上、基幹統計調査と一般統計調査には以下の相違点があります。
ポイント
- 基幹統計調査には回答義務があり申告拒否等をした場合には罰則がありますが、一般統計調査は強制力を伴わないため回答を拒否しても罰則はありません。
- 基幹統計調査には地方公共団体により事務が実施されますが、一般統計調査にはその規定はありません。
基幹統計調査における統計法上の規定
基幹統計調査は正確な統計を作成する必要性が特に高いため、統計法上で一般統計調査にはない規定が以下の通り定められています。
①報告義務
基幹統計調査の報告を拒否したり虚偽の報告をすることを禁止し、違反した者に対しては50万円以下の罰金が科せられています。
②かたり調査の禁止
基幹統計調査と紛らわしい表示や説明をして情報を得る行為(「かたり調査」)を禁止し、違反した者に対しては未遂も含めて2年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられています。
③地方公共団体による事務の実施
調査を円滑かつ効率的に実施する目的で調査事務の一部を法定受託事務として、地方公共団体が行うことができます。地方公共団体が行う事務内容は、個々の基幹統計調査ごとに国勢調査令、人口動態調査令及び統計法施行令で定められています。
主な基幹統計調査の例
ここからは、基幹統計調査には具体的にどのような調査があるのかを解説します。
中には耳にしたことのある調査名もあると思いますので、ぜひ確認してみてください。
基幹統計調査の一覧
- 国勢調査
- 経済センサス‐基礎調査
- 住宅・土地統計調査
- 就業構造基本調査
- 全国家計構造調査
- 社会生活基本調査
- 労働力調査
- 小売物価統計調査
- 家計調査
- 学校基本調査
- 学校保健統計調査
- 農林業センサス
- 漁業センサス
- 経済センサス‐活動調査
- 経済構造実態調査
- 生産動態統計調査
- 商業動態統計調査
- 毎月勤労統計調査
ここからは、主な基幹統計調査をピックアップし、それぞれ解説します。
①国勢調査
国勢調査は5年に一度実施される調査で、男女の性別、出生年月、就業状態、従業地または通学地、世帯員の数、住居の種類、住宅の建て方などを調査します。
対象範囲は国内に住んでいる全ての人及び世帯を対象とする国の最も重要な統計調査で、国内の人口や世帯の実態を明らかにする目的で実施されます。国勢調査から得られる統計は、行政で広く利用されます。
また、国勢調査の結果は、将来人口推計や国民経済計算(SNA)等の統計作成のための基本データとしても用いられます。
②経済センサス‐基礎調査
経済センサスは5年に一度実施される調査で、国内全ての産業分野における事業所活動状態等の基本的構造を全国及び地域別に明らかにし、事業所・企業を対象とする各種統計調査の母集団情報を整備することを目的とした調査です。
本調査の結果は各種統計調査の母集団情報や、事業所の集積、地域開発計画・都市計画の立案の基礎資料、社会福祉施設及び公共・文化施設などの整備計画に利用されます。
③毎月勤労統計調査
毎月勤労統計調査は、その名の通り毎月実施される調査で、事業所の雇用状況と給与・労働時間の変動を全国及び都道府県別に明らかにする調査です。
本調査の結果は、景気判断や都道府県の政策決定指針、雇用保険や労災保険の給付額の改定資料として使用されます。
また、民間企業の給与改正や人事院勧告の資料として使用されることもあります。
④学校基本調査
学校基本調査は、毎年実施される調査で、全国全ての学校を対象に、学校に関する基本的事項を調査することで学校教育行政上の基礎資料を得ることを目的としています。
学校数、在学者数、教職員数、学校施設、学校経費、卒業後の進路状況等を調査します。
⑤全国家計構造調査
全国家計構造調査は、5年に一度実施される調査で、全国から無作為抽出した約90,000世帯を対象として、家計における消費・所得・資産及び負債の実態を把握し、世帯の所得分布及び消費水準等を明らかにすることを目的とする調査です。
基幹統計調査に分類される調査の特徴
基幹統計調査は国が行う統計調査の中でも特に重要な調査であるため、下記のような特徴があります。
①全数調査
全数調査とは、調査対象となる集団の全てを調べる調査です。
集団の中を全て調査するため、統計の正確性は担保されますが、膨大な費用と手間がかかる点がデメリットです。
基幹統計調査における全数調査には国勢調査と経済センサス等が該当します。
国勢調査は全世帯に対して、経済センサスは全企業に対して実施されます。
②大規模な標本調査
標本調査とは、調査対象となる集団の一部(標本)を抜き出して調べる調査です。
選ばれた一部を対象に調査を行うことで調査にかかる費用と手間は大幅に削減できます。
しかし、全数調査とは違い誤差が含まれるというデメリットがあります。
基幹統計調査では労働力調査や家計調査等が全国を対象とした大規模な標本調査に当たります。
まとめ
本記事では、基幹統計調査の概要や基幹統計調査と一般統計調査の相違点、基幹統計調査に該当する主な調査、基幹統計調査に分類される調査の特徴について解説しました。
国の統計調査について定めている統計法の中でも、基幹統計調査は一般統計調査とは異なり大規模に実施する場合が多く回答義務もある非常に重要な調査です。
本記事を読んで基幹統計調査に興味を持った方は、この機会に統計調査全般について深く学んでみてください!
参考)
- 「統計法について」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/1-1n.htm - 「主な基幹統計調査の実施予定一覧」(松阪市)
https://www.city.matsusaka.mie.jp/site/toukei/osirase3.html - 「経済センサス‐基礎調査」(総務省統計局)
https://www.stat.go.jp/data/e-census/2019/index.html - 「毎月勤労統計調査って何?」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/12/tp1201-1.html - 「学校基本調査-調査の概要」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/gaiyou/chousa/1267968.htm - 「2019年全国家計構造調査の概要」(総務省統計局)
https://www.stat.go.jp/data/zenkokukakei/2019/cgaiyo.html
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