製造業界では、日々様々な製品が作られています。
社会のニーズに合わせて、役に立つ製品、売れる製品を多くのメーカーさんが研究開発し、製造しています。
特に日本国内では、製品の品質に対して高いクオリティが求められるので、メーカーで働く方々の日々の努力には頭が上がりません。
しかしそんななか、製品の製造や品質の試験において、データの改ざんや品質不正が起こってしまうことがあります。
本記事では、過去に起きた大手企業の品質不正の事例を10選紹介していきます。
日立Astemo ブレーキとサスペンションの検査不正
2021年、日立Astemoでは、山梨の工場と、福島の工場で不正が行われていることが判明しました。
山梨工場では、具体的にはブレーキ液を溜める「分離型リザーバタンク」が作られていましたが、その中の5つの製品で、定期試験を実施せずに取引先への報告書に偽りのデータを記載していたというのです。
また、福島工場では出荷検査および定期試験において不正が続いていたということも判明。
出荷検査では4つの製品で減衰力に対して、測定時に判定する温度設定を変えて規格値に収めたり、取引先に指定された出力許容範囲を超えて設定する不正があったようです。
出荷検査とは別に定期試験でも、取引先と決めた品質規格から外れている減衰力の実測値を、品質規格内の数値に書き換え報告していました。
参考:https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2112/23/news061.html
日野自動車 エンジン認証不正
2022年3月、日野自動車にて排出ガス規制の対象である中型および大型エンジンにて不正行為があったことを確認したというプレスリリースが発表されました。
具体的には、中型エンジンの劣化耐久性を測る試験の途中で排ガス性能が劣化し規制値に満たない可能性を認識した上で、排出ガス後処理装置の第2マフラーを交換して試験を続けていたということです。そのため経年劣化によって規制値を超える可能性が考えられます。
また、大型エンジンでは燃費をよく見せるため、開発エンジンの燃費が目標に到達しないと認識した上で、燃費を測定している装置の校正値設定を変更し、実際よりも燃費値が良く表示されるようにして試験をしていたということです。
参考:https://www.hino.co.jp/corp/news/assets/1e2b03e47e24f9ab3141eed3c07cabfe.pdf
日本ファンオール 火災報知設備の製造で不正
2022年3月、日本ファンオールにて、型式承認時に、承認されていなかった部品を使用されていたという不正が明らかになりました。
生産を中止していた部品の生産中止情報と在庫情報が社内で共有されないまま受注を受けたため、納期を守ることを優先し、承認されていない部品の使用や不正な手段を用いて型式適合検定の合格をしました。
内部監査機能や部門間の連携などが不十分であったことから発生してしまった不正行為ということです。
2013年9月~2020年10月までに製造された4品種、合計9663台が対象とのことです。
参考:https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2204/01/news069.html
VW フォルクスワーゲン 排ガス不正
2015年9月、フォルクスワーゲン社のディーゼル車で、排出ガスを低減させる装置を、台上試験では働かせていたが、実際の走行では装置が働かなくする不正ソフトが使用されていたことが判明しました。
米環境保護局によると通常の走行時の排気ガスは、基準の10~40倍であると公表されています。
全世界でみると、不正の対象となった車の台数は約1100万台にものぼるということでかなり影響の大きい不正行為ということで話題となりました。
その結果、2007年からCEOを務めていたマルティン・ヴィンターコルン氏は、同年の9月23日に辞任となりました。
参考:https://www.webcg.net/articles/-/33361
東レ子会社 品質データ不正書き換え
2017年11月、東レの子会社である東レハイブリッドコード社において、タイヤなどの形状を維持する補強材の品質データを一部書き換えていたことが判明しました。
具体的には、補強材を納品する際に、品質基準から外れた製品を品質データを書き換えていたということです。
書き換えは2008年4月~2016年7月にかけて行われており、件数としては149件のデータが対象となりました。
参考:https://www.toray.co.jp/news/details/20171128001328.html
日立化成 品質検査のデータを改ざん
2018年11月、特殊化学品メーカーの大手として有名な日立化成において、ビルや工場で使われるバックアップ電源用の鉛蓄電池で、品質検査データを改ざんしていたと発表されました。
不正は7年以上に渡り行われ、なんと国内の7事業所全てにおいて不正が行われていたということです。
不正の内容としては、鉛蓄電池の電圧測定において、実測値と異なる数値を検査成績書に記載していたというものです。
また、合格基準を電圧1.8ボルト以上と顧客と決めていたのに対し、名張事業所では1.75ボルト以上を合格としていました。
検査不正は、2017年度連結売上高である6692億円の1割程度に相当するもので、対象顧客としては延べ1900社に達するという衝撃的なものでした。
参考:https://toyokeizai.net/articles/-/247273
東洋ゴム 断熱パネルの性能偽装(要修正)
2017年2月、東洋ゴムにおいて、同社にとって4度目となる不正が明らかとなりました。
具体的には、船舶向けのバルブに使用される「シートリング」という産業用ゴム製品において、必要な検査を行っていない状態で出荷するといった不正行為が明らかになりました。
これまでにも、2007年には断熱パネルの耐火性能偽装が判明し、2015年3月には建物のゆれをおさえるための免震ゴムの性能データにおけるデータ偽装が、そして同年10月には鉄道車両で使われる防振ゴムにおける不正行為が発覚したということで、3度もの不正が発覚していた中での今回の不正発覚です。
信頼回復までには、なかなか長い時間がかかりそうですね。
参考:https://toyokeizai.net/articles/-/158829
旭化成建材・三井住友建設 杭打ち工事データの改ざん
2015年11月、三井住友建設が施工主で建設していた横浜市のマンションのパークシティLaLa横浜の建設において、旭化成建材の工事の一部に建物を支える杭の一部が強固な地盤(支持層)に届いていない不備があったことが判明しました。
記者会見では、子会社の旭化成建材が過去10年以内に杭工事を手掛けた3040件の物件を調査した結果、266件で支持層の位置に関するデータなどの改ざんが明らかになりました。
検査のなかで電流値データを記録する場面において、測定の失敗や、紙の紛失などにより、他のデータをコピーして貼り付けていたということです。
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO94229360Q5A121C1000000/
東亜建設工業 空港工事での地盤改良データ改ざん
2016年5月、東亜建設工業は羽田、福岡、松山の3つの空港誘導路と滑走路の地盤改良工事において、液状化を防止する薬液の注入量データを改ざんが行っていたことが判明しました。
実際には薬液は計画の5~50%程度しか注入されていませんでしたが、計画通りに実施したと虚偽の報告をしていたというものです。
三菱マテリアルグループ 三菱電線工業と三菱伸銅金属加工品などの不正品出荷
2017年11月、三菱マテリアルの子会社である、三菱電線工業、三菱伸銅、三菱アルミニウムにおいて、不正が判明しました。
三菱電線では、ゴム素材のOリングといわれる樹脂製のシール材やガスケットを、寸法や素材特性が顧客の要求基準や自社の製造基準を満たしていなかったためデータ改ざんをして出荷したというものです。不正の期間は、2015年4月~2017年10月。出荷量は2.7億個ということで、全出荷量の20%にあたる大規模なものでした。
また、三菱伸銅では、自動車や電子機器向けのコイル状銅製品の硬さ、引張強度、表面粗さ、導電率といったデータを改ざんをしていたようです。
不正の期間は2016年10月~2017年10月。その間に出荷した879トン、全出荷量の0.6%が不正の対象だったということです。
また、三菱アルミニウムにおいても、不適合品のデータ改ざん後の出荷があったことが分かっています。
参考:https://trend-news-to-you.com/mitsubishi-material-kaizan#i
まとめ
製造業界では厳しい品質基準がありますが、顧客の要望を満たすため、売上を上げるために品質不正が行われてしまうケースがあります。
しかし、一度不正が起きてしまうと、これまで企業が長年積み上げた社会からの信用を一気に失ってしまい、そしてそれを取り戻すことは容易ではありません。
不正ができない職場環境づくりや、従業員の意識改革など、企業では対策を講じることが求められます。