
こんにちは!統計ブロガーのにっしーです!
以前書いた、早生まれの野球選手が少ない理由という記事では、運動神経と誕生月の関係についてお話しました。
今回は、学力と誕生月には関連があるのかについてお話ししていきます。
この記事を読むと分かること
- 相対年齢効果とは
- 誕生日と最終学歴
- 進学校と早生まれの関係
- 海外の相対年齢効果の事例

雑学としても面白い話ですので、是非最後まで読んでいただけますと幸いです!
相対年齢効果
同じ学年に所属する生徒でも、誕生日によって実年齢は異なります。
この実年齢の違いが、学業成績やスポーツの成績に影響を与えることを相対年齢効果といいます。
結論から言いますと、スポーツ選手と誕生月の関係と同じ理由で、学力においても相対年齢効果はあるということが様々な研究から判明しています。
今回は、その中でも特に参考になる論文やデータを紹介していきます!
誕生月と最終学歴
2007年に一橋大学の川口大司准教授(現・東京大学教授)が発表した『誕生日と学業成績・最終学歴』という論文があります。
この論文では、国際学力テスト『国際数学・理科教育動向調査』『OECD 生徒の学習到達度調査』を受けた小学生から高校生の成績と誕生日を分析した結果を述べています。
その分析結果では、なんと同一学年の最年長者と最年少者では偏差値に2~3の差が見られました。
そして、この論文の中で川口准教授は以下のようなことを述べています。
「生まれ月の違いは, 同級生の中での児童・生徒 の相対的な発達度の違いをもたらすが, この効果 は年齢を重ねるにしたがって消えていくものとも 考えられる。 しかしながら, 幼少期の初期的体験 がその後の学習意欲などに影響を与えることを通 じて, 初期時点での成績差が次なる成績差を生む ようなメカニズムが存在すると, 成績差は中学生・ 高校生になっても残ることが考えられ, ひいては 最終学歴の違いにまでつながる可能性もある。」
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2007/12/pdf/029-042.pdf
一言でまとめると、
生まれ月が学業成績や最終学歴の違いに影響を与えるということですね。
実際に記事の中で生まれ月と学業成績の関係をヒストグラムで示しており、
大変分かりやすいので、是非一度読んでみるといいかもしれません。
進学校と早生まれ
他にも、誕生月と学力の関連を示した研究があります。
筑波大学の内山三郎名誉教授の『小学生から大学生までに現れる生まれ月分布の偏り』という研究では、以下のようなことが分かっています。
- 入学時に選抜試験のある小学校では、生まれが標準より2割強少なく、4~6月生まれが2割弱多い。
- 高等学校においては、進学校では早生まれの割合が2割強少なく、4~6月と7~9月生まれの割合が多い。
- 非進学校の場合は、逆に早生まれがほぼ3割増。
この結論は、先ほどの川口教授の論文での、誕生月は最終学歴にまで影響を及ぼす、という結論と整合性がありますね。
相対年齢効果は国外でも
また、この誕生月と学力の差は、国外でも事例があります。
たとえば、イギリスの名門大学であるオックスフォード大学とケンブリッジ大学の事例です。
この両大学への入学者の大半はイングランドとウェールズからであることが知られています。
このイングランドとウェールズではどちらも学年の始まりは9月からなので、両地域における6~8月が、日本でいうところの早生まれ(1~3月)に該当します。
そして、両大学の2012年の入学者の誕生月を調べた結果、明らかに学年の始まり付近(9~11月)の人が多く、早生まれ(6~8月)の人たちの割合が少なかったことがわかりました!
相対年齢効果は国内だけでなく、世界中で確認されています。
学年を遅らせて入学させる!?
ここまで読むと、相対年齢効果の影響力は決して小さくないことが分かると思います。
そして、最大で11ヶ月近くの実年齢の違いが出てくる現状の教育システムで良いのかという疑問も出てきます。
実は、既に外国では相対年齢効果の影響を考慮して、就学年齢に1年ほど幅を持たせるというシステムを導入している国もあります。(アメリカやドイツなど)
日本でもこのシステムが導入されれば、誕生月の影響を少しは軽減できるはずです。
今後の導入に期待しましょう。
最後に
運動神経だけでなく、学力においても誕生月の影響が見られるということが分かりました。
ただ、当然ながら早生まれでも優秀な方はたくさんおられるわけで、大切なことは子供の自己肯定力を伸ばしてあげるような教育をしていくということです。
そして、早生まれの子が遅生まれの子より優秀な成績を収めた場合は、うんと褒めてあげましょう。
優秀な成績を収めた子供の頑張りをしっかりほめることで、その子供の自己肯定力を高めることにつながります。
早生まれなどの影響を少しでも軽減してあげる環境をつくることは、親に求められる責務かもしれません。
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